「記憶力を強くする」を読みました。

私が面白いと思った部分をまとめると次の8つ。
1、記憶力は年齢によって衰えたりしない
2、「もう若い頃のようには覚えられない」とはどういうことなのか
3、ストレスは記憶力の敵
4、科学的にもっとも能率的な復習スケジュール
5、「かなしばり現象」を科学的に説明
6、「夢」はアセチルコリンという化学物質で作られている
7、頭が良くなるためには、やっぱり「好奇心」「努力」「忍耐力」「コツ」というあたりまえのことが大事
8、頭が良くなる薬が開発中
   
まずは1、記憶力は年齢によって衰えたりしない
脳の神経細胞は生まれた時が一番多く、だんだん死んでいくが、使われていない神経細胞が選ばれて死んでいく。また、脳の「海馬」という記憶力を司る部分の神経細胞は増やすことができる。よって、年齢によって記憶力が衰えるということはない。記憶に必要な神経細胞が死んでしまうのが痴呆症(認知症)などの疾患。
   
2、「もう若い頃のようには覚えられない」とはどういうことなのか
子供時代(中学生ぐらいまで)と大人時代では得意な記憶が違う。子供時代は丸暗記が得意であるが、大人になると論理立った記憶が発達する。得意な記憶の種類が変化するということ。なので、子供の頃の勉強方法を大人になって繰り返しても効果が低い。「もう若い頃のようには覚えられない」となってしまう。
   
3、ストレスは記憶力の敵
ストレスが記憶を妨げるのは何となく分かる気がする。そして、逆にストレスの敵も記憶力であるということ。記憶力が高いほうがストレスが少なくなる。何故なら、記憶力が高いほうが、より早くそのストレスを受けている環境を学習する(慣れる)から。
    
4、科学的にもっとも能率的な復習スケジュール
これは結構有名。まずは1週間後に1回目の復習を行う。次にこの復習から2週間後に2回目。そして、最後に、2回目の復習から1ヵ月後に3回目を行う。つまり、2ヶ月かけて覚える。
   
5、「かなしばり現象」を科学的に説明
睡眠中、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す。レム睡眠は脳は活発だが体が眠った状態。夢をよく見るのもレム睡眠のとき。ノンレム睡眠は脳は眠っているが体は活発な状態。寝ぞうが悪いのもノンレム睡眠のとき。これを交互に繰り返し体と脳を休めているということになる。そして「かなしばり現象」とは起床する予定ではないレム睡眠のときに脳が覚醒してしまった結果のこと。体は眠ったままなので、意識は明瞭なのにも関わらず起き上がることはおろか、手足を動かすことさえできない。つまり、一種の睡眠障害である。
   
6、「夢」はアセチルコリンという化学物質で作られている
夢は過去の記憶を反芻して整理している。脳の情報を整え記憶を強化するために必須な過程。風変わりな夢というのは単に目覚めたときに覚えていやすいというだけであって、再生されている夢はむしろ日常的なものがほとんど。夢は物事をしっかりと覚えるための大切な行為である。つまり、記憶にも関係がある神経伝達物質であるアセチルコリンが夢を作っているということ。
   
7、頭が良くなるためには、やっぱり「好奇心」「努力」「忍耐力」「コツ」というあたりまえのことが大事
物事に興味を持って取り組めば脳にシータ波が発生し記憶しやすい状態が作られる。これが「好奇心」
記憶には相乗効果がある。つまり、AとBの2つの事象を覚えると、「A」「B」だけではなく「Aから見たB」「Bから見たA」というように「事象」と「事象の連合」が生まれる。この効果を「累積の効果」という。つまり勉強における努力と成果は比例関係ではなく累乗関数の関係にあり、後半になればぐーっと伸びる。これが「努力」と「忍耐力」。
運動においても勉強においても天才的と思える能力は一般的に「理解の仕方」を覚えることが基盤になっている。つまり「コツ」を掴むということ。
科学的な見地からも「好奇心」「努力」「忍耐力」「コツ」が大事ということですね。著者は『「天才」とは、努力が足りない凡人の妄想によって作られた言葉です。』と言い切っています。キビシィー。
   
8、頭が良くなる薬が開発中
頭が良くなる薬が開発中とのこと。しかも、この本が出版された2001年の段階でマウス実験では成功している。マウスの記憶に掛かる時間が3分の1になったとのこと。勉強時間が3分の1で済む。著者は将来的にはビタミン剤や栄養ドリンクを飲むような感覚でこの「頭が良くなる薬」を飲むような時代がくるだろうと言っています。また、著者はそのような社会になれば「勉強や仕事に割く時間が減り、余った時間が生まれる」と言っていますが、これには私は懐疑的ですね。8時間かかっていた勉強や仕事が4時間で済むようになったとして、その余りの時間を遊ぶ時間・趣味の時間に使わせてもらえるでしょうか。やはりその時間も勉強・仕事をさせられているような気がします。特に日本人は。
とは言っても、記憶力が良くなるということは、理解力も上がり、ストレスも少なくなるということだと思うので、犯罪は減るのではないでしょうか。私はこの人間の社会におけるどうしようもない問題が科学の力によって1歩前進するかもしれないという考え方に魅力を感じます。早く完成しないかな。