「火星ダーク・バラード」を読みました

SF小説
遺伝子操作によって生まれ「超共感性」と呼ばれる能力を持った少女を中心とする物語。
少女は他人の精神と共振し増幅器となり力を発動する。
総合科学研究所のグレアムという人物が作り出すのですが、グレアムは物語上は悪役だが、思想自体は悪ではないわけです。
戦争や犯罪や汚職などがなくならない現状を憂いて、他人との強い一体感を持ち平和的解決を第一に望む思想を生まれながらに持つ新しい人間を作り上げようとした。性悪説に基づいてますね。
一方、主人公は誰に決められるのではなく自分で決断することを良しとする。どちらかといえば性善説
また、物語には快楽殺人を行うジョエルというキーパーソンが出てくるのですが、ジョエルがいることによってグレアムの主張が一層頷けるものに思えます。だっていくら平和になっても経済的に発展しても快楽的に犯罪を行うものはいなくならないわけですから。
私も「いくら道徳や宗教を徹底しても犯罪はなくならないんじゃないの?」と思ったりするので、科学の力によって一歩踏み越えようする考え方には惹かれましたね。現実的にはその道徳や宗教が反対するためにそういう研究が行われることはないんでしょうけど。
物語自体は難解なものではなくサクサク読めて面白かったです。